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patina!

patina!

涙の人間ドック(R18指定)

旧題:人間ドックを初体験。2003/1/25~31

選んだ理由:この日記は1月23、24日に京都で行った私にとって人間ドックの記録だ。書き始めたらエピソードがいろいろあったため5回の「続きもの」になってしまった。結構ノレて書けていたのか、一人称が私から俺にいつのまにか変わっているのもご愛嬌。ここからシモネタを書くのに心理的な障壁がなくなったような気がする・・・。ちなみにまだオカマにはなっていないようです。
ではどうぞ!
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 京都で私を待っていたのは魔の人間ドックだった。
 いきなりの採血(私は注射が嫌い)は序の口であった。まず最初に苦しかったのは初体験の胃カメラ
看護婦から喉に麻酔を吹きかけられ穴の空いたまぬけなマウスピースを咥えさせられる。唾液がでそうになる。看護婦は「無理しないで唾液はだらだら流しちゃって下さ~い」と言うがそんな恥ずかしいことできるかい!と思っていた。
 とりあえず横になる。「もっと横をむいて、足はこう・・・」と看護婦にさせられた格好はまるで死んだ犬
 
 医者がファイバーカメラを口に突っ込む。麻酔してても痛い。喉のあたりで「オエ、オエ」と無意識に嘔吐のような声にならない声が出る。く、苦しい!あ、なんか俺、泣いてる・・・。涙出ちゃってるよー!マウスピースを見るとこれも無意識のうちに唾液がだらだらと垂れている。医者のいくつかの問いかけに意識では「ハイ」と答えるがマウスピースを咥えたままなので実際には「アウ」としか言えない。
 涙も唾液もだらだら~、出す声は「オエオエ」「アウアウ」・・・。
 なんか胃カメラって人間の尊厳というかプライドをズタズタにする。

ようやく胃カメラを終えた俺を待っていたのはこれも初体験の浣腸だった。

**

「次、浣腸です」と看護婦さんから言われた時の感情をどの様に表現したらよいだろうか・・・。恥ずかしいような、でもちょっぴりうれしいような。というのも浣腸は初体験だったからだ。
 ま、とにかく浣腸をする小部屋に入りベッドに横になる。看護婦さんはおそらく40代の女性でちょっぴり安心。看護婦さんから腰にタオルが掛けられる。
 「はい、ズポンをひざまで下ろして下さい」
 ここでふと考えた。 ポコチンを出すべきだろうか?。とりあえず出さなくとも浣腸はできるはずだ。しかしここまで来て出さないのも男としていかがなものか。えーい、毒を喰らわば皿までだ!出しちゃお。もう半ばヤケクソで、はいどうぞ、とばかりおしりを看護婦さんに差し出した。

「はい、いきますよ~、力抜いてね。」 プスッ・・・・。

「はぅぅ・・・」と心が声にならない声を上げた。薬液が下腹を駆け巡るのを感じた。ペパーミントガムを食べた時の様なツーンとした感じが腸のあたりで広がる。

「5分ぐらい便器をまたいで立って我慢しといて下さいね、じゃないと薬液がすぐ出てきて便が出てきませんから」と看護婦さんが言う。
 この寒いなか、5分も下半身露出してたら風邪ひいちまわぁ、と思ったのでズボンを履いて待合室で待つことにした。大丈夫。漏らすはずがない。私は括約筋には絶対の自信を持っている男なのだ。

 浣腸部屋を出る時、ちらりと看護婦さんの顔を見た。
なんとなく「おかあさん・・・」と呼びたくなった。

約5分後。あ、そろそろヤバイかも・・・とトイレに向かった私に非情の仕打ちが待っていた。男子トイレの6つの個室が全て使用中なのだ!ヤバイ、相当ヤバイよォ~、と括約筋君が悲鳴をあげている。急いでトイレを出てそこらにいた看護婦さんに訴えるように事情を話した。看護婦さんはちょっと苦笑しながらも「女子トイレ使ってください。今日は女性はいませんか・・・」
言葉の終わりまで聞かず女子トイレに駆け込む!もう大丈夫だ、よくがんばってくれた、括約筋君。今日は活躍したね。もう我慢しなくていいんだよ・・・。
 
 ふ~、と待合室で一息つく私にまた受難の時が迫ってきているのをこの時はまだ知るよしもなかった。

***


 検査項目が多いと目の前の検査をこなすだけで精一杯でその後の検査まで気をまわす余裕が無くなる。
 特に胃カメラ~浣腸と自分にとって相当ハードなハードルを越えたばかりの私はその次の検査は何か?なんてとても考えられなかった。

 しかし!今になってよく考えてみると浣腸をして大腸をキレイキレイにしたからには、次にこの検査が待っていることは自明の理だったのだ。その検査の名は直腸検査。

 「次は直腸検査ね」と看護婦さんの声に力なく「ぅいス・・・」と答える。幽体離脱ももうすぐだ。

「はい、また横になってズボンをずらしてね!」
「ぅいス・・・」
胃カメラと浣腸によってもはや思考回路は停止状態なのでさっきと違って ポコチンを出す事に心理的抵抗はさほどない。

さっきの胃カメラの時の医者が来た。
 「はい、前立腺の触診しますからね~」
あーもー、なんでもいいからさっさとやってくれ。

するとなにやらおしりのほうでパッツンパッツン!とゴム手袋をはめる音がする。

 「じゃ、おしりの力ぬいてね~、指入れますよー

なんですって!!

「はうぅ・・・」また心が悲鳴をあげた・・・。
おっさんの医者の節のある太い指がグリグリグリグリと私の小菊をまさぐっている。
あうあうあうあう・・・
俺はもう男としてダメかもしれないな・・・。

**

医者の触診がやっと終わる。
終わったか、と一安心。しかしここまではまだ直腸検査のプロローグに過ぎなかった。

「今度はコレを入れますからね」と医者が見せたのは胃カメラよりも一回り太いファイバーカメラだった・・・。こんな太くて黒いものが俺のかわいい肛門に・・・。ま、色は関係ないが(笑)

「じゃ入れまーす!」・・・グサッ。

「はぅ!」と今度は本当に声が出た。鈍い痛みがどんどん直線的に腹の中ほどまでずんずんと上がってくる。近くのモニターにはホルモンみたいな俺の内臓が映っている。さくら色で結構キレイだ

 それにしても痛い。胃カメラとはまた別の鈍い痛みだ。
 ふとオカマってこんなかな、なんて考える。あーあ、もう俺も実質オカマの仲間入りか・・・、なんてアホな事も考えだした。すこしづつ意識が遠のいていく・・・。
 プライマル・スクリームというバンドの「ロックス」という曲が幻聴の様に聴こえて来た。

♪Get your rocks off(ハメをはずしな)♪
♪Get your rocks off,honey(ハメをはずしな、ハニー)♪
♪Shake it now now(腰を振って)♪
♪Get’em off downtown(ダウンダウンに繰り出そうぜ)♪

 あ、転調した、なんかドラムが聴こえてきた。ドンドコドンドコドンドコドンドコ・・・。アフリカン・ビート。原始のリズムだ。あぁ、もうあっちの世界に行ってしまうんだぁ・・・。さよなら男の俺・・・。こんにちはオカマのアタイ・・・。

「はいこれで終わります。お疲れ様でした」

 医者の声で我に帰った。ファイバーカメラがするすると肛門から引き抜かれていく。やっと俺のグレイト・ジャーニーも終わりを迎えたのだろうか・・・。

**

上から下から悪魔の黒い棒で体内をかき回された俺は疲れきってPM4時から病院のベッドで泥のように眠った。

 翌日は朝から検尿と採血検査が待っていた。1時間毎に3回、昨日のものもあわせると右腕に4つの注射痕ができた。右腕はまるでTVドラマで見るシャブ中のようだ。

 12時前に全ての検査が終了し真冬の京都に放り出された。京都のガイドブックも持ってきたが、もう観光をする気もおきなかった。
 口の中が痛いのに気づいた・・・。口内炎が2か所に出来ている・・・。人間ドックに来てかえって不健康になっているぢゃないか!!
 
 俺にとって初めての人間ドック、残ったのは右腕の痛々しい注射痕と口内炎。そして何か大事なものを失ってしまった、という喪失感だけだった・・・。

(終わり)



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